「先輩、友達はいいんですか?」
「あぁ、別れもしてきたし」
「でも、打ち上げとかあるんじゃないんですか?」
「二度と会えないわけじゃないし。問題ない」
問題ない、が少し信じられなくて、訝しげな顔で壱矢を見る。
「俺がいつも一緒にいたいのは壱だけだから」
「っ、」
手を握り、自分の口許に当てた壱矢がにこりと微笑んだ。
その表情は、私を煽っている少し意地の悪いもの。
「やめてください、そういうの」
「なに、どれ?」
「やっぱり先輩も過保護です」
「俺のは溺愛っていうんだよ」
軽やかな笑い声が聞こえる。
今までと何らかわりない壱矢の笑い声。
だけど、これまでより一番幸せそうな、喉の奥から気持ちがあふれでそうなほどに砕けたものだった。
「壱」
ふっと、首もとになにかが触れる。
壱矢の三年間使い込まれた、ネクタイ。
朝約束した、ネクタイ交換だった。
甘酸っぱさがひろがる。
このタイミングなんて、ずるい。
「これからはこれ着けてけよ?」
言いながら私のネクタイを外し、自分の首にかけた。
それもずるい。
うっかりするとによによしてしまう顔を抑えて、ただ「はい」とだけで答えたけれど、壱矢には全部お見通しだろう。
「じゃ、いこっか」
きっとこれから色々なことにぶつかって行くんだろう。
時喧嘩もして、お互いに酷く傷つけ合うかもしれない。
でも、私はそれでも、身体中を埋め尽くす愛おしさだけは絶対に消さない。
たまに嫌いになって時々失恋しても、また愛すればいい。
そういう平凡さでいい。
手を繋ぎ、お互いの目を見つめ合った私たちは、新たな未来への第一歩を踏み出したのだった。
「あぁ、別れもしてきたし」
「でも、打ち上げとかあるんじゃないんですか?」
「二度と会えないわけじゃないし。問題ない」
問題ない、が少し信じられなくて、訝しげな顔で壱矢を見る。
「俺がいつも一緒にいたいのは壱だけだから」
「っ、」
手を握り、自分の口許に当てた壱矢がにこりと微笑んだ。
その表情は、私を煽っている少し意地の悪いもの。
「やめてください、そういうの」
「なに、どれ?」
「やっぱり先輩も過保護です」
「俺のは溺愛っていうんだよ」
軽やかな笑い声が聞こえる。
今までと何らかわりない壱矢の笑い声。
だけど、これまでより一番幸せそうな、喉の奥から気持ちがあふれでそうなほどに砕けたものだった。
「壱」
ふっと、首もとになにかが触れる。
壱矢の三年間使い込まれた、ネクタイ。
朝約束した、ネクタイ交換だった。
甘酸っぱさがひろがる。
このタイミングなんて、ずるい。
「これからはこれ着けてけよ?」
言いながら私のネクタイを外し、自分の首にかけた。
それもずるい。
うっかりするとによによしてしまう顔を抑えて、ただ「はい」とだけで答えたけれど、壱矢には全部お見通しだろう。
「じゃ、いこっか」
きっとこれから色々なことにぶつかって行くんだろう。
時喧嘩もして、お互いに酷く傷つけ合うかもしれない。
でも、私はそれでも、身体中を埋め尽くす愛おしさだけは絶対に消さない。
たまに嫌いになって時々失恋しても、また愛すればいい。
そういう平凡さでいい。
手を繋ぎ、お互いの目を見つめ合った私たちは、新たな未来への第一歩を踏み出したのだった。

