何を言っても止まらない、のだと。
なにより、あの修羅の日の愛羅とその後の愛羅も効果的に働いた。
あそこまで酷いとは恭吾さんも知らなかったらしい。
そして、それを後押しするようにここ最近の愛羅の私への嫌悪も増長し、攻撃性も寂しいだけではとてもカバーできない状態にだってきたため、親が折れたのである。

家族としてやっていくには、しこりが膨らみすぎてしまっていた。
それに加えて、私や壱矢がこれまで愛羅に譲ってきていた過去を、軽く見れないと思ったらしい。
負担をちゃんと見てくれたのだ。

多分、私たちが家を出たところで愛羅のなにも変わりはしないだろう。
今まで通りにわがままを言い、今まで通りにそれが通過する。
我慢しなければいけない対象が家にいないのだから、恭吾さんも母もブレーキなどかからない。
けどそれならそれでいい。
壱矢はどうか知らないけど、正直愛羅の先のことなどどうでもよかった。
解放される喜びの方が大きかったから、今は考えたくもない。

 「壱は通うの遠くなったけど、ごめんな?」

 「いえ、もともと早起きですし、苦にもなりませんから」

新しく住む部屋は、壱矢の大学に合わせたので今通っている学校へは遠くなってしまった。
壱矢は他県の大学進学になったので、そっちに寄せた県境の部屋に決めた。
壱矢の大学まで電車で三十分程度、私の通う学校までは電車で一時間。
普段から早起きで登校するために時間を合わせる必要がないので、遠くなったとしても特に気にすることではない。
若干の生活リズムの変化くらい、取るに足らないことだった。