「斎賀さん、悪いんだけど、今日の図書当番替わってもらえないかな??」

放課後になり、帰宅しなければならない憂鬱さにどんよりしていると、クラスメイトの女子が両手を合わせて拝んできた。
今日は週に一度の図書整備の日で、図書館の本を綺麗に整頓して掃除するといった作業をしなければならない。
各クラスから一人毎週駆り出させるのだが、ぶっちゃけ勉強のことしか頭にない特進の生徒の大半はいつもサボって帰っている。
図書館も司書さんがいて、ちゃんと綺麗に使っているため掃除といってもほとんどする必要もない。
理事長が、学力を上げるために世話になっている図書たちに敬意を払えということで、掃除させているのだ。
週に一度、司書さんの会合があるためその替わりに我々生徒が整備を任されている。
彼女は今日、その担当らしい。

 「いいよ」

断る理由もない。
少しでも家から離れたい私としては、願ったり叶ったりだ。
なんなら毎週してもいい。
私は即答していた。

 「ありがとうっ!」

 「いえ」

こちらこそありがとうだ。

 「どうしても外せない用事が出来て、ごめんね?予定とかなかった?」

 「大丈夫」

精一杯の笑みを浮かべると、安堵したクラスメイトがもう一度「ありがとう」と言って教室を出ていった。