「私は自分がどんな人間だったのか、それすらもう思い出せないよ」
演じた自分が濃すぎた。
いい子でいた自分が、過去の自分をすっかり塗り替えてしまっていた。
もっと気楽で、無理をしていなかったということだけは、強く残っている。
あとは輪郭もない。
「先輩の前で、昨日、久しぶりに思いきり笑った」
気持ちよかった。
大声ではしゃいで笑って、お腹が痛くなるくらいに笑い転げて、泣いて。
壱矢がそうさせてくれた。
だから、
「母さんはもういい…、いらない。だから、謝ることは私たちにないの」
これ以上求めるな。
何年かして、今回のことが笑い話になった頃なら、もしかしたら迷惑をかけてすまなかったと言えるかもしれない。
でも、今の私たちに、親の保護と加護が必要な私たちに、それを求めるな。
図々しすぎる。
「謝らなきゃいけないことがあるなら教えてよ。母さんが私にしたこと以上の悪いことをしたなら、それがどんなことなのか、教えてよ」
項垂れる母を見下ろし、頭の上から詰る。
あるなら言ってみろ。
「壱ちゃん、それはあまりに、言いすぎだ、喜美子だってこんなこと望んでいたわけじゃない。全部家や家族を守ろうとした結果なんだ。分かってやってくれないか?この通りだから」
頭を下げてお願いしてくるくせに、今までの所業は詫びようとしない。
頭の凝り固まった大人は、これだから困る。
自分より目下、自分より立場が弱いと思っている相手に謝ることを知らないから手に追えない。
演じた自分が濃すぎた。
いい子でいた自分が、過去の自分をすっかり塗り替えてしまっていた。
もっと気楽で、無理をしていなかったということだけは、強く残っている。
あとは輪郭もない。
「先輩の前で、昨日、久しぶりに思いきり笑った」
気持ちよかった。
大声ではしゃいで笑って、お腹が痛くなるくらいに笑い転げて、泣いて。
壱矢がそうさせてくれた。
だから、
「母さんはもういい…、いらない。だから、謝ることは私たちにないの」
これ以上求めるな。
何年かして、今回のことが笑い話になった頃なら、もしかしたら迷惑をかけてすまなかったと言えるかもしれない。
でも、今の私たちに、親の保護と加護が必要な私たちに、それを求めるな。
図々しすぎる。
「謝らなきゃいけないことがあるなら教えてよ。母さんが私にしたこと以上の悪いことをしたなら、それがどんなことなのか、教えてよ」
項垂れる母を見下ろし、頭の上から詰る。
あるなら言ってみろ。
「壱ちゃん、それはあまりに、言いすぎだ、喜美子だってこんなこと望んでいたわけじゃない。全部家や家族を守ろうとした結果なんだ。分かってやってくれないか?この通りだから」
頭を下げてお願いしてくるくせに、今までの所業は詫びようとしない。
頭の凝り固まった大人は、これだから困る。
自分より目下、自分より立場が弱いと思っている相手に謝ることを知らないから手に追えない。

