「私を気づかってはくれなかった。愛羅といつも比べて、愛羅ばかりを優先させて、なんでも譲らせて、もう、誉めてもくれなくなった。普通クラスの成績しか取れなかった私が特進にまで進むことに疑問もなかった?一人でいることを選んだことに何も思わなかった?愛羅のことで頭が一杯だったから、私の何も気が付かなかったんじゃないの?今は誉めて欲しいなんて思わない。でも、ここに越してきた頃の私は母さんを必要としてた。少なくともあの頃は、私を見て欲しいってあがきまくってた。誉めて欲しかった、気にかけて欲しかった。わがままを言いたかった…言えるチャンスが、欲しかった。愛羅を気にかけて優先するその一割でもいいから欲しかった」
喉から手が出るほど欲しかった。
愛羅に笑いかける優しさも、頭を撫でる柔らかさも、母が作ったお弁当も、愛も、少しでいいから、以前のように私だけに向ける何かが欲しかった。
母の意向を優先することで、いつかもらえると思っていた。
でも途中から、諦めていたのだ。
惰性で今まで通りを貫いていただけ。
「壱…」
「母親がいるのに弁当自分で作るって何よ。母さんがこの家に馴染んで、義理の子供達に嫌われないように私は私を押し殺して協力してきた。ずっと見てきた。ただ見てきた。年も変わらない子が自分の母親に可愛がられて優先されてきたのを、ずっと見せつけられてきた。ずっと、ずっと、可愛くない子を演じてあげてた。母さんもう、私が最後に笑ったのなんか覚えてないでしょ?母さんが私に笑いかけてくれた最後も」
私にはずいぶん、笑いかけてくれていない。
「それは…っ」
「なのによく、祭りなんか行けたね…、だから笑ったの。自分が蔑ろにされて情けなくて笑ったの」
「違うっ、そうじゃないっ、蔑ろになんてしてないっ。私だって、必死だったの、この家に馴染まなきゃ嫌われないように、今度は失敗しないようにしなきゃって、必死だったのよ…」
知ってるよ、そんなこと。
バカにするな。
そのために私がどれだけ…どんなに私が…っ。
喉から手が出るほど欲しかった。
愛羅に笑いかける優しさも、頭を撫でる柔らかさも、母が作ったお弁当も、愛も、少しでいいから、以前のように私だけに向ける何かが欲しかった。
母の意向を優先することで、いつかもらえると思っていた。
でも途中から、諦めていたのだ。
惰性で今まで通りを貫いていただけ。
「壱…」
「母親がいるのに弁当自分で作るって何よ。母さんがこの家に馴染んで、義理の子供達に嫌われないように私は私を押し殺して協力してきた。ずっと見てきた。ただ見てきた。年も変わらない子が自分の母親に可愛がられて優先されてきたのを、ずっと見せつけられてきた。ずっと、ずっと、可愛くない子を演じてあげてた。母さんもう、私が最後に笑ったのなんか覚えてないでしょ?母さんが私に笑いかけてくれた最後も」
私にはずいぶん、笑いかけてくれていない。
「それは…っ」
「なのによく、祭りなんか行けたね…、だから笑ったの。自分が蔑ろにされて情けなくて笑ったの」
「違うっ、そうじゃないっ、蔑ろになんてしてないっ。私だって、必死だったの、この家に馴染まなきゃ嫌われないように、今度は失敗しないようにしなきゃって、必死だったのよ…」
知ってるよ、そんなこと。
バカにするな。
そのために私がどれだけ…どんなに私が…っ。

