好きとか愛とか

守られている実感が沸く。
私たちの近すぎる様子を不審げに見る二人の視線も、まるで気にならない。
ある程度私を宥めた壱矢が、躊躇いがちに口を開いた。

 「壱、…襲われてるんですよ」

壱矢にも力が入り、体が強ばっているのが分かる。
真実が告げられて、事実を受け止めるまでの間微妙な沈黙が落ちた。
情報を整理する二人が固まり、そして二人の顔が真っ青になった。

 「なんですって!!どっ、どういうこと!?襲われた!?なんなのそれ!!いつっ、それいつのこと!?壱矢君っ、どういうことなのっ、何も、私っ、聞かされて…っ」

 「どっ、どういうことだそれはっ!何故黙ってた!」

中途半端に立ち上がり、壱矢に詰め寄る恭吾さん。
立ち上がりはしたものの、おろおろしすぎて卒倒寸前になった母はソファに座り込んでしまった。
顔面蒼白、体が震えている。
思いの外驚いて狼狽しているのを見てしまえば、逆にこっちが落ち着いてしまう。

 「以前、早退までさせて愛羅を迎えにいかせたとき、男に拉致されて……、最悪なことには至らず酷くても打撲で済みましたが、その時俺が呼ばれて交番へ迎えに行っています」

その時の事を自分の力で出来る限り頭の中で想像した母親が、目を潤ませて私を見てきた。
そして転げる勢いで私に駆け寄り、両ひざを床について私の腕を揺さぶる。

 「どうして!壱っ、どうしてっ、なんでそんな大事なことをっ黙って、私に言ってくれなかったの!?」

 「信用してないからです」

冷たい言葉と現実が、母を直撃する。