好きとか愛とか

楽しみの祭りをぶっ潰してやれなんて思ってなかったけど、少なからず愛羅は祭りに行きその雰囲気の中にはいたわけだ。
人が悲しみの淵にいるというのに、まったく…。

　｢へーぇ、行ったんだ、祭り。笑える｣

落ち込んだなんて、だったら祭りになんて行けない。
母がどんな言葉をかけて、どんな盛り上げかたで愛羅のご機嫌を取ったのか、目に見えるようでほんとにおかしい。
鼻を鳴らして失笑してしまった。

　｢なんなのその態度は、迷惑かけてその言い方っ。おかしな事なんて何もないでしょうっ？なんであなたはそう可愛げがないの！？こんなことしてまず謝るのが筋でしょう！！乱暴にかんざしまで奪ってっ、恥ずかしいと思いなさいっ｣

乱暴にかんざしを奪った…、なるほど、それだけしか見えてなかったということか。
最初に乱暴して私から奪ったのは、愛羅じゃないか。
親の喜ぶ愛らしさを巧みに利用して、絶対落とせる計算で奪ったあれは、乱暴とはいわないのか。

　｢B君はA君から大事なものをもらいました、けれどA君の大切な友達のCさんがそれを欲しいとねだっのでA君が勝手にB君にあげたはずのものをCさんに渡してしまいました。もらったはずのものが自分の許可無く他人のもとへ行ってしまったことに怒ったB君は、Cさんから強引に取り戻しました、B君は悪いことをしたのでしょうか。お母さん、これどうだと思う？｣

　｢それとこれとは違うでしょっ｣

　｢同じよ｣

誰かのものを本人の許可無く動かせば、それは奪うということに他ならない。
一言私に訊ねて、一言愛羅に無理だといえばよかっただけのこと。