母親の言ってることが正しいわけじゃないと、証明するのはありもしないものをその場に具現化するより難しいことだった。
「幻滅したよ親父に。壱には申し訳ないけど、喜美子さんの事も…壱が強いと思ってる二人に、なんの未来も描けなかった」
ここ最近は、壱矢が母に何かしらの不満らしきものを訴えているのは見えていた。
おかしいのではないか、と。
壱矢はきっと知らないだろうけど、私はそれでもう十分救われた。
壱矢の体をぎゅっと抱き締め、自分の体温を押し付けた。
「先輩が分かってくれたら、それでいいんです」
骨がきしむくらいに強く抱き返された私の頭上で、壱矢が小さく舌打ちした。
壱矢の舌打ちに驚いた私だったが、驚くことも許されない力が体全体を包んでいた。
「よくねぇ。文句も言わずに耐えて、我慢しなくていいことも我慢して。こいつはどれだけのものを溜め込んでんだろうって、想像するのだって難しかったよ」
だめだ、
溢れる…。
壱矢の言う、“溜め込んだもの”が理解した喜びと受け皿を得たことで流れ出ようとしている。
これ以上壱矢に全て受け止めさせるわけにはいかず、緩くなったブレーキをもう一度引き締め直した。
「俺は…そんな壱をずっと見てきた。うちに越してきてからずっとお前を見てきた。お前と関わりたくて仕方がなかった。ふとした時に、昔みたいな笑顔が見れることもあって、それが嬉しくて…気が付いたらお前しか見ていたくなくなってた」
私を強く引き寄せていた腕の力が弱まり、胸元が離れていく。
それと同時に壱矢の大きな手が頬に添えられた。
「幻滅したよ親父に。壱には申し訳ないけど、喜美子さんの事も…壱が強いと思ってる二人に、なんの未来も描けなかった」
ここ最近は、壱矢が母に何かしらの不満らしきものを訴えているのは見えていた。
おかしいのではないか、と。
壱矢はきっと知らないだろうけど、私はそれでもう十分救われた。
壱矢の体をぎゅっと抱き締め、自分の体温を押し付けた。
「先輩が分かってくれたら、それでいいんです」
骨がきしむくらいに強く抱き返された私の頭上で、壱矢が小さく舌打ちした。
壱矢の舌打ちに驚いた私だったが、驚くことも許されない力が体全体を包んでいた。
「よくねぇ。文句も言わずに耐えて、我慢しなくていいことも我慢して。こいつはどれだけのものを溜め込んでんだろうって、想像するのだって難しかったよ」
だめだ、
溢れる…。
壱矢の言う、“溜め込んだもの”が理解した喜びと受け皿を得たことで流れ出ようとしている。
これ以上壱矢に全て受け止めさせるわけにはいかず、緩くなったブレーキをもう一度引き締め直した。
「俺は…そんな壱をずっと見てきた。うちに越してきてからずっとお前を見てきた。お前と関わりたくて仕方がなかった。ふとした時に、昔みたいな笑顔が見れることもあって、それが嬉しくて…気が付いたらお前しか見ていたくなくなってた」
私を強く引き寄せていた腕の力が弱まり、胸元が離れていく。
それと同時に壱矢の大きな手が頬に添えられた。

