好きとか愛とか

しばらくすると、横になっていた壱矢が寝息をたて始め、眠ってしまった。
部屋の中に響く何かの機械の音と全くあっていなくて、それが音痴に聞こえて笑える。

 「先にシャワーもらおうかな…」

固まった汗が体に貼り付いて、べたべたさが気持ち悪い。
壱矢には悪いが先にシャワーを借りることにした。
バスルームに行くとお決まりのアメニティーが用意されていたが、その包装の可愛さと細かさに驚いた。
おしゃれに、スパみたいな高級感があった。
何から何まで揃っていて、使わず持って帰る人の気持ちが分かった気がする。

汗でじめっとするワンピースを脱ぎ、洗濯を考えるが止めた。
乾かなかったら着るものがない。
それはかなり困る。
ボディタオルを取り、隣に並んだ袋を見て目玉が飛び出た。

下着だ。

なんと下着まで用意されていて、至れり尽くせりに感動すら覚える。
中に入るとなんと広い。
二人で入っても余裕だろう浴槽には、何やら機械が備え付けられていた。
汗を流したいだけなので興味はないが、おそらくジャグジーなるものだと思われる。

整えられた髪はもう乱れまくっていて、原型を留めていない。
豪快にほどいてシャワーを捻り、頭から湯を被ると、じめじめべたべたしていた汗が一気に流れ落ちた。
熱すぎるお湯が、気持ちいい。
一人になると今日の事を思い出して自己嫌悪に陥るかと思ったが、不思議とそうはならなかった。
これが本当にひとりぼっちなら、今ごろそうなっていたかもしれない。
けれど壱矢がいてくれる、それだけで自分の弱い気持ちが払拭されていた。

 「先輩…」

シャワーも歯磨きも済ませ、あとは寝るだけの状態でバスローブに着替えると、部屋にもどってまだ眠っている壱矢に声をかけた。

 「んん…、んー」

身じろぎをし、うっすら目を開けた壱矢がぼんやりした顔で私を見上げている。