好きとか愛とか

 「とりあえず食べようか」

レジ袋から買ったものを出してテーブルに広げ、汗をかいていたペットボトルの蓋を開ける。
喉仏を大きく上下させてごくごく飲む壱矢。
いつもより男らしさを感じてしまうのは、昨日までの関係と今の関係が変わったからだろうか。
好きだという事実が、欠けていた心のピースを埋めたからだろうか。
ちょっとした仕草でさえドキドキしてしまう。

 「レンジまである。へー、便利」

言いながらレンジを操作し、買ってきたものを暖めている。
前に利用したファッションホテルにもあったんだろうか。
あの時は使用することがなかったので気にも止めなかったけれど、改めて部屋の中を見てみると内装やら間取りやらがずいぶん違っていた。

今回の部屋はファッションホテルの色が薄く、ドラマで観るビジネスホテルと酷似していた。
ごてごてしたものもふりふりしたものもなくて、見た目にも落ち着ける。
シンプルといった感じだ。

 「じゃあ、いただきます」

 「いただきます」

二人並んで手を合わせ、屋台で買った粉ものを平らげていく。
香ばしいソースや、鉄板ならではの味が美味しくて、五臓六腑に染みるが体感できた。
屋台のものってどうしてこうも食欲をそそり、美味しさを底上げするんだろうか。

 「あー…、食った、やべぇ、ちょっと寝ていい?」

焼きそば一つ、唐揚げ一パック、広島焼きを平らげた壱矢はさすがに食べすぎで、お腹を擦りながら大きなベッドへダイブした。
焼きそばを食べ終えた私も、膨らんでしまった胃袋を宥める。
すっきりした紅茶がもたれる胃に浸透していった。