おそらく、恥ずかしさが目立ったんじゃないかと思う。

 「そうなんですか…」

自分が考えなしでしでかしたことが、こんなに大きくなってしまったことに罪悪感が込み上げた。
気にするなと言われても、やはり気になってしまう。
帰りたくないと言ったものの、考え直した方かいいかと思い直したとき、壱矢のスマホが振動と共に鳴った。
画面を確認した壱矢が、一瞬出る事を躊躇った。
相手が誰かは、壱矢の表情とまとった雰囲気で大体見当がつく。

 「はい」

壱矢が私の手を強く握り、親指の腹で手の甲を撫でる。

 「見つけた。でもまだ帰れない。……なんでって、傷付いてんだよ。そんくらい分かるだろ。…………は?違う、そういうことじゃない。自分がどれだけ人に寄り添える人間かって自信があんのかしんねぇけど、まったく役に立たねぇよ。怒ってないから帰ってこいって言ってるうちは、壱の気持ちなんか理解できっこない。今日は帰らない」

電話の相手は恭吾さんのようで、砕けた話し方がそれを示している。
ただ、理解できる交渉内容ではなく、逆に壱矢を苛立たせている。
出ることを躊躇ったのは、この結果が透けて見えていたからだろう。
怒ってないから帰ってこい…。
それは何についての言葉なんだろう。
行き先も言わずに家を飛び出したことか、それとも愛羅から無理矢理かんざしを奪い取って傷付けたことか。
後者が理由なら、もう救いようも手のつけようもない。

 「へーぇ、壱を一人残して帰れって??ずいぶんだな」

壱矢の声が怒りに満ちていた。
ぎゅぅっと、力の入った手がふるふると震えている。
少し痛いくらいだった。