本当はすごく嫌だ。
壱矢もいるし、人の事に首を突っ込んで面倒に巻き込まれるなんて冗談じゃない。
だけど、安倍さんの遠くを見る姿が自分の家族を追う姿と被って見えて、どうしても放っておけなかった。
やりたいことはあるのに、チャレンジしたいことやどうしても手に入れたいものがあるのに、それがうまく出来ないもどかしさは私もよく知っている。
誰かがほんの少し助けてくれたら今の状況を打破できるかもしれないと、見えない救世主を何度探したことか知れない。
あの時こう動いていれば、と、後悔する誰かの姿も自分の姿も、もう見たくはなかった。
どんどん距離が近付き、メガネがなくても顔の判別がつくところまで来ると、壱矢が私に気が付いてビクッと身体を振るわせた。
“壱”と言おうとして、途中で止めたのが口の動きで分かる。
それから荻野先輩ともう一人の生徒も私の存在に気付き、三人がこちらに向き直った。
足がすくみそうになるが、今さら引き返せない。
「おはようございます。私特進一年斎賀壱ともうします。突然で恐縮ですが荻野先輩、少しお時間よろしいですか?」
壱矢が私に何か言おうとしたのを遮って、荻野先輩に切り込んだ。
「え?俺?こいつじゃなくて?」
てっきり壱矢に用があると思っていた荻野生徒は、まさかの自分指名にどぎまぎしていた。
壱矢もいるし、人の事に首を突っ込んで面倒に巻き込まれるなんて冗談じゃない。
だけど、安倍さんの遠くを見る姿が自分の家族を追う姿と被って見えて、どうしても放っておけなかった。
やりたいことはあるのに、チャレンジしたいことやどうしても手に入れたいものがあるのに、それがうまく出来ないもどかしさは私もよく知っている。
誰かがほんの少し助けてくれたら今の状況を打破できるかもしれないと、見えない救世主を何度探したことか知れない。
あの時こう動いていれば、と、後悔する誰かの姿も自分の姿も、もう見たくはなかった。
どんどん距離が近付き、メガネがなくても顔の判別がつくところまで来ると、壱矢が私に気が付いてビクッと身体を振るわせた。
“壱”と言おうとして、途中で止めたのが口の動きで分かる。
それから荻野先輩ともう一人の生徒も私の存在に気付き、三人がこちらに向き直った。
足がすくみそうになるが、今さら引き返せない。
「おはようございます。私特進一年斎賀壱ともうします。突然で恐縮ですが荻野先輩、少しお時間よろしいですか?」
壱矢が私に何か言おうとしたのを遮って、荻野先輩に切り込んだ。
「え?俺?こいつじゃなくて?」
てっきり壱矢に用があると思っていた荻野生徒は、まさかの自分指名にどぎまぎしていた。

