好きとか愛とか

帯がどうとか、愛羅ちゃんによく似合うわとか人の気持ちなどお構い無く楽しそうにしている。
さっきまでの居心地の悪さなんて、ないも同然だった。

 「いえ、愛羅ちゃんのです」

 「違うだろ」

声が荒々しい。
私にも怒りの矛先を向けているのだろうか。
どうして?
妹のワガママを育てるなということなんだろうか。
気持ちは分からないでもないが、私に向ける言葉としてはふさわしくない。

 「でも、丸くおさまりましたから」

 「おさまってない」

いつものことなのに、どうして今日に限って食いついてくるんだろう。
愛羅が欲しがれば私か壱矢が我慢する。
そんなの、今に始まったことじゃないのに、こうやって何度も丸くおさめてきたのに、どうして突っかかってくるんだろう。
しかも私に。
言うなら私じゃなく母と愛羅なのに、どうして私に言うのか分からなくて、せっかく治まりかけたイライラがまた沸騰してしまった。

 「じゃあどうしろっていうんですか?私のものだからって駄々をこねて奪い返せばいいんですか?」

 「やれよたまには。諦めすぎだろ」

それを言うの?私に?
私が責められる側だとでも言うのか。
でも、壱矢が向こう側じゃないことは分かる。
そうなら、取り返せだの諦めすぎだの言ってきたりはしない。