好きとか愛とか

さんざん家族家族と押し付けてきたのに、ちょっと布を取ったくらいで男女を意識するなんて中途半端にもほどがある。

 「何?家族なんじゃないの?私が愛羅の姉なら、彼は兄じゃないの?」

肩口から浴衣を剥ぎ取り、ゆっくり、見せつけるように袖を抜くと、母の目の前でそれを脱ぎ捨てた。
母と愛羅の間に、浴衣がバサリと落下する。
浴衣を脱ぎ捨てた私は下着のみ。
慌てた壱矢が横を向いた。
裸も見たことあるくせに、今さら。
畳の上においてあった短パンを履き、Tシャツを掴んでそのまま部屋の出口へ向かう。

 「もう呼ばないでね」

振り返ること無くそれだけ言うと、襖を開けて部屋を後にした。

 「もうっ、ほんっとにっ、恥じらいも可愛げもないんだから。そんなことじゃお嫁に行けないわよっ」

背中に投げつけられた声には動揺が混ざっていて、イヤミを飛ばしているが強がりにしか聞こえなかった。
娘が年頃の男の前で下着姿になったのだ、狼狽えるに決まっている。
口では家族だの兄弟だのと言ったって、実際は寄せ集めで裸を見せてもいい間柄ではない。
母だってなりきれていなかったのだ。
ざまあみろ、と、心底思った。

 「壱」

後ろで襖が開き、声がかけられる。
壱矢だというのは声を聞かなくても分かった。
こうなって真っ先に私の後を追ってくれるのは、私にはもう壱矢しかいない。
優しく手首か握られた。

 「あれはお前のだろ」

壱矢の声にかぶって、襖の後ろからは母と愛羅の声がする。
おそらく、浴衣を着ているのだろう。