二度もまた躊躇って、その次の言葉がすんなり出るわけでもなく、目を細めてなにか言いたそうにする壱矢をただ見つめるだけになっている。
「いや、なんでもない。今はいいわ」
苦笑した壱矢が私の頬を軽く摘んだ。
不覚にも変な声が出てしまった。
何を言いたかったのか気になるけれど、訊いたところで答えられるものではないことが分かっている。
話したくなったら話してくれるのを待つしかない。
「腹減ったし、帰ろっか」
立ち上がった壱矢が私に手を差し出した。
なんの違和感もなく、抵抗もなく、もう慣れた流れで壱矢の手を取った。
こうできるのは後どれくらいだろうか、そんなことを考えながら、強烈に降り注ぐ光の中で家路についた。
────────────────
───────────
───────
夏休みが始まって一週間経ったある日の昼下り、勉強を中断させられた私は京間六畳の広い和室に呼ばれていた。
想定外の浴衣スタイルで。
なぜ私がわざわざ手を止めてまでこんな格好させられているのかというと、みんなで祭りに行くと張り切った母が寸法合わせをすると言い出したからだ。
祭りに行く来などなかった私は断固拒否したのだが、年々大人になる子供達と家族で出掛けるのも少なくなるからと情を挟んできた。
壱矢の大学が始まると、行く場所によったら集まれないかもしれないと。
「いや、なんでもない。今はいいわ」
苦笑した壱矢が私の頬を軽く摘んだ。
不覚にも変な声が出てしまった。
何を言いたかったのか気になるけれど、訊いたところで答えられるものではないことが分かっている。
話したくなったら話してくれるのを待つしかない。
「腹減ったし、帰ろっか」
立ち上がった壱矢が私に手を差し出した。
なんの違和感もなく、抵抗もなく、もう慣れた流れで壱矢の手を取った。
こうできるのは後どれくらいだろうか、そんなことを考えながら、強烈に降り注ぐ光の中で家路についた。
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夏休みが始まって一週間経ったある日の昼下り、勉強を中断させられた私は京間六畳の広い和室に呼ばれていた。
想定外の浴衣スタイルで。
なぜ私がわざわざ手を止めてまでこんな格好させられているのかというと、みんなで祭りに行くと張り切った母が寸法合わせをすると言い出したからだ。
祭りに行く来などなかった私は断固拒否したのだが、年々大人になる子供達と家族で出掛けるのも少なくなるからと情を挟んできた。
壱矢の大学が始まると、行く場所によったら集まれないかもしれないと。

