でもそれだって、私も似たようなものだ。
あの時だって、頭に浮かんだのは壱矢だった。
何かあると、壱矢を思い出していることが増えた。
なのに、
「やだ、なにいうのっ」
さらにテレて溶けてしまった安倍さんが、悲鳴に近い声できゃーきゃー言っている。
私と違うのは、こういうところ…。
私はこんなに可愛い顔、できない。
こんなふうに反応しない。
だから、これは恋なんかじゃないのかもしれない。
私は壱矢にはどう見えているんだろう。
なんで私は壱矢にどう見られているか、こんなに気にするんだろう。
答えがでないままあっという間に夏休みが来て、私は逃げ場の一つを一ヶ月以上も失うことになった。
「だりぃ…」
終業式の帰り、朝とは打って変わってげっそりした壱矢が低い声で唸る。
暑さが苦手なのだろうか、その表情は全く優れない。
特に今日はまた暑いし、蝉の声もまたそれを助長していて体感温度も増している。
アスファルトで焼かれた空気も喉に絡まって、過ごしやすさは全くもって皆無だった。
「そこで休みますか?」
そこ、とはちょうどそばにあった小さな公園。
暑すぎるからだろうか、春頃は小さな子供たちで賑わっていたのに今は人っ子一人いない。
しかしベンチのあるところは屋根がついていて、日陰加減がここより温度の低さをアピールしている。
壱矢も公園の方を見て、少し思案したあと頷いた。
「行く」
私の手を引き、ベンチへまっしぐらの壱矢の足取りはぐったりしている人のものとは思えない軽快さだ。
あの時だって、頭に浮かんだのは壱矢だった。
何かあると、壱矢を思い出していることが増えた。
なのに、
「やだ、なにいうのっ」
さらにテレて溶けてしまった安倍さんが、悲鳴に近い声できゃーきゃー言っている。
私と違うのは、こういうところ…。
私はこんなに可愛い顔、できない。
こんなふうに反応しない。
だから、これは恋なんかじゃないのかもしれない。
私は壱矢にはどう見えているんだろう。
なんで私は壱矢にどう見られているか、こんなに気にするんだろう。
答えがでないままあっという間に夏休みが来て、私は逃げ場の一つを一ヶ月以上も失うことになった。
「だりぃ…」
終業式の帰り、朝とは打って変わってげっそりした壱矢が低い声で唸る。
暑さが苦手なのだろうか、その表情は全く優れない。
特に今日はまた暑いし、蝉の声もまたそれを助長していて体感温度も増している。
アスファルトで焼かれた空気も喉に絡まって、過ごしやすさは全くもって皆無だった。
「そこで休みますか?」
そこ、とはちょうどそばにあった小さな公園。
暑すぎるからだろうか、春頃は小さな子供たちで賑わっていたのに今は人っ子一人いない。
しかしベンチのあるところは屋根がついていて、日陰加減がここより温度の低さをアピールしている。
壱矢も公園の方を見て、少し思案したあと頷いた。
「行く」
私の手を引き、ベンチへまっしぐらの壱矢の足取りはぐったりしている人のものとは思えない軽快さだ。

