好きとか愛とか

でも壱矢が困っていれば、多分助けようとは思う。
壱矢は違うのだろうか。
私が壱矢を助けたことなんて無い。
でも壱矢は私が困っているときはいつも助けてくれている。
見返りも実入りもないのに。
これの原動力はなんなんだろう。
私の思う原理では、相手に何かしらの思いがあるからということになる。
でも私たちは付き合っていない。
付き合う素振りだって見せてない。
ただの偽彼氏彼女。

壱矢はどうして私に関わってくるのだろう。
しかも面倒なことまで、嫌な顔一つせずに。
やっぱり家族だからだろうか。
口ではああいっていても、家族という枠組みからは私を外せないんじゃないんだろうか。

チクリと、胸のどこかが痛む。
これがここ最近頻回していて、どうも調子が悪い。
胸が痛む原因はなに?
これが、誰かを特別に思うこととは違うものだとしたら、私はこの感覚になんと名付ければいいんだろう。

安倍さんの表情は誰がみても好きな人がいますと言っている。
顔に出やすいとかではなく、雰囲気やまとう全てが恋を伝えてくる。
もし私が壱矢に恋をしていたら、これがそうなら、誰かの目にも同じく映るんだろうか。

 「恋をしている人の顔って、いいね」

 「え?」

 「安倍さん、すごく可愛い」

真っ赤に頬を染めて、口元を綻ばせて、素直に荻野先輩への思いを表情に表す。
きっと、何かあったとき真っ先に荻野先輩が思い浮かぶのだろう。