一体どうしたんだろう。
こちらから訊くべきかどうか迷っていたら、安倍さんがお菓子を食べるのを一旦止めて姿勢を只した。
つられて私も座り直す。

 「壱ちゃんに報告することがあるの」

 「はい」

 「実は私、昨日、先輩とお付き合いが始まっちゃって、きゃー…っ」

両手で顔を隠し、俯いた彼女がいった言葉は実際モゴモゴしていてよく聞き取れなかったけれど、確かにお付き合いが始まったといった。
さっきまでの伸びた背筋はどこへやら、ふにゃふにゃである。
まぁ付き合うだろうなと、そう思っていた私はあまり驚くことでもなくて、むしろまだ付き合ってなかったのかといった感じだった。
お互いに思いがなきゃ、自分の時間をその人に使ったりしない。
ただ言い忘れていただけで、私の中では二人はもう付き合ってるも同然だった。
と、ここまで考えてふと思い当たる。

じゃあ私たちはどう?

なにも思っていない相手に自分の時間を割かない、という原理で行くと、私と壱矢だってそうだ。
私だってなんとも思っていない人と不必要に関わりたいと思わない。
関わりの無いクラスメイトが困っていても、手をさしのべる自分など想像もつかない。