期末試験も無事に終え、ごたついた中での試験ということもあって結果が心配だったが、いつもと同じ変動はみられず安心した。
ごたごたすると平常運転が難しいけれど、さらに悪い方へ転がったわけではないので気持ちにかかる負担が軽かったよう。
けれど、私の中にはまだ二つの案件が燻ったまま共存している。

犯人の面通しが済んで少しは変わるかと思っていた男性への恐怖は、まだ消えずにいた。
恭吾さんと廊下で出くわしたりする分にはまだましなのだが、急に背後に立たれたりすると怖くてすくみそうになる。
同じ家で暮らしているのだから変に思われるわけにもいかず、そのとき平静を装うふりをするのだが、相手にどう映っているかまでは分からない。
壱矢には相変わらず恐怖を感じずに接している。

そしてその壱矢…。
二人で入ったラブホで、私は自分のパーソナルスペースより深いところへ壱矢を招いてしまった。
といっても、もちろんなにもなかった。
ただ抱き合って、壱矢が私の腕や首筋にキスをしただけ。
いや、それだけじゃない。

私は壱矢におねだりしてしまった。
私が見逃しているなにかが見つかるよう、エサを与えて欲しいと。
具体的になんか分からない。
あのときは自分の中にあるモヤモヤしたものがなんなのか、それが壱矢と過ごすことではっきりするのなら、その手助けをして欲しいと思ったから。
だから、あんなことを言ってしまったんだ。