だからって自分一人ではこれ以上大きくするやり方なんか知らない。
壱矢といることで嬉しいが膨らむなら、私の嬉しいには壱矢は必要不可欠だ。

 「私だけじゃ大きくできません。エサを、ください」

 「ほんと、煽るね、お前」

指が痛くない程度に甘噛みされる。

 「やるよ、いくらでも」

強く、強く抱き締められ、でも足りなくて、壱矢の一部になるくらいに私も壱矢を抱き締め返した。

 「お前は俺から、離れなくていいよ」

あんなに震えていた体を止めたのは、この人。
私の中からなにかを引き出すのも、押さえ込むのも、きっとこの人だけなんだと、この時本気でそう思った。

ずっとこうしていたいと思う気持ちが、すんなり受け入れられたのはこの人だったから。
多分この先もずっと、壱矢は私に何かをもたらし、なにかを奪う。
ずっと、
ずっと、
そうだったらいいなと、願わずにいられなかった。