それは甘い期待ですか?
私はそれを期待してもいいんですか?

私はきっと壱矢に惹かれているんだと思う。
壱矢が私にもたらす何もかもに惹かれている。
確信はそれだけ。
でもそれが恋なのかどうか、分からない。
自分に無いものをたくさんもってる壱矢に憧れているだけかもしれない。
自分にとって都合よく壱矢を振り回しているだけな気もして、錯覚の可能性も捨てきれなくて。
もっと、もっと深いところまで確かなものを得ないと、これが恋だとは言えない。

確かなものがほしい。
このドキドキが恋なのが、それともただの憧れで異性がそばにいるから起こる化学反応なのか、判断する確かなものがほしい。

壱矢の胸に顔を埋め、温もりを吸い込む。
落ち着ける壱矢の香り。
リズムを刻む心臓の音は、私の心臓と同じくらい早かった。

指と指が絡み、壱矢に引き寄せられる。
少し空いていた二人の距離が、ぴったり重なった。

 「壱?もっと触ってい?お前に」

額と額を重ね合わせて、おねだりみたいに擦り合わせてくる。
みたことの無い壱矢にくらくらした。

 「もっと…ですか?」

 「そう。嫌?」

息が触れ合う距離。
壱矢の熱っぽい瞳が私を魅了する。
もっと私が映ればいい。

 「嫌じゃないです」

壱矢が私の肩口に唇を落とす。
布越しでも熱さが伝わって、ぴくんと体が跳ねた。

 「どこまで?」