周りで仕事をしている警察官の人にじろじろ見られたりするのかと心配したが、学生が面通しなんて日常茶飯事なのかこちらなど全く気になっていないようだった。

 「お待たせ、ごめんね遅くなって」

刑事課の一角にある部屋から、婦警さんともう一人刑事さんが出てきた。
それはスーツを着た背の高い男の人で、背格好も私を襲った犯人と似ていたため、条件反射で足がすくみそうになる。

 「どうも、刑事課の佐竹です」

自己紹介をし、笑顔を作ってはくれるが事務的動作が目立っていた。

 「婦警さんが一緒ではないんですか?」

 「ごめんなさい?私はここまでなの。佐竹さんがついてくれるから安心してね」

てっきり、婦警さんが同行してくれると思っていた。
アテが外れて不安が膨らんでくる。
安心してねとは言われても、やはり、男の人にそばにいられるのには抵抗を隠しきれない。

 「取調室は狭いので、君はここで待っていてくれるかな」

壱矢にそう言うと、急かすように私を部屋の方へ誘導する。
急に距離がつまってしまって、慌てた私が壱矢の手をもう一度掴んだ。
壱矢は両手で私の手を包み込み、「ここにいるから」と囁いた。
私は頷いて答え、すがっていた壱矢の手を離して刑事さんの隣へ並んだ。
足ががくがくする。
自分で歩いてるのに、自分じゃない奇妙な感覚。