好きとか愛とか

壱矢の口調も興味あるのかないのか暇潰しで訊いてるのかなんなのか分からない。

 「へーぇ」

ほら、興味無さそうに返してくるのに、なんで訊いてくるんだか。
なんか、この空気は嫌だ。

 「先輩もよく告白されてるんじゃないですか?」

だからってなんで、こんなこと訊いてんの、私。
いくら会話が思い付かないからって、嫌な空気の延長戦を辿ってどうする。
壱矢は「そうだな」と答えるだけ。

 「断ってるんですか?」

突っ込んで訊きたいことじゃないのに、止められないのはどうしてなんだろう。
質問の内容自体がまるで壱矢を知りたがってるみたいで、恥ずかしすぎて顔が見れない。
取り消せない質問の愚かさが情けなくて、和紙は完全に下を向いてしまった。

しばらく無言が続き、後ろで身じろぐのを感じると同時に、起き上がった壱矢が俯いた私の顎を指先で掬い上げた。
強引よりも弱い力で上を向かされると、真っ直ぐな壱矢の瞳とぶつかった。

 「知りたいの?」

 「え…」

 「俺のプライベート、知りたいの?」

長い脚の間におさめられ、強い視線に捕まってしまっては、もう壱矢から視線も意識も逸らすことが出来ない。
壱矢のプライベート…。
ほんの少し前までは、知りたいともなんとも思わなかったし、全然と答えただろう。
でも────
知りたくないと言えば嘘になる。
でも知りたいと言えばそれは……

 「いいえ…」

 「は?」

すっとんきょうな声が大きめで響く。