疲れた表情を貼り付けて、ソファに深く座り込んだ。
洗い物を済ませた私は、そんな壱矢を視界のはしにおさめつつ通りすぎ、リビングのドアを開いた。
「勉強?」
後ろから声をかけられてふりかえると、ソファに半分寝転んだ状態の壱矢がこっちを見ていた。
だらけきった壱矢を見るのは珍しい。
「いえ、少し休憩します」
「じゃあ一緒に休憩しよ?」
自分の隣を軽く叩いて、そこへ座れと要求してくる。
壱矢と暮らすようになってから、そこのソファで彼の隣に座ったことはない。
彼もまた、私を誘ったこともない。
緊張が走る。
「どうしてですか?」
「話し相手ほしいから」
私と話をすることなんて何かあるんだろうか。
特に楽しい会話を提供できるわけでもなく、一緒にいて楽しい時間を過ごせるとも思えない。
話が弾まないならいても居なくても変わらないし、どちらかといえば気詰まりなんじゃないだろうか。
ぐだぐだと考え、即答できずにいる私に、壱矢が手を差し出して微笑んだ。
「おいで」
その声が、その語気が、その瞳が、優しいくせに強くて。
拒めない引力を放ってくるから、
だから私は────
「はい」
抗えなかった。
半端に開けていたドアを閉め、まるで壱矢に吸い寄せられるようにソファに近づく。
壱矢の前まで来て止まると、彼はただ私を見上げているだけでなにも言葉を発しない。
差し出された手は、私がそれを取らない限り引っ込まない気がして、気付けば広い手のひらに自分の指先を乗せていた。
壱矢の手が跳ねる。
洗い物を済ませた私は、そんな壱矢を視界のはしにおさめつつ通りすぎ、リビングのドアを開いた。
「勉強?」
後ろから声をかけられてふりかえると、ソファに半分寝転んだ状態の壱矢がこっちを見ていた。
だらけきった壱矢を見るのは珍しい。
「いえ、少し休憩します」
「じゃあ一緒に休憩しよ?」
自分の隣を軽く叩いて、そこへ座れと要求してくる。
壱矢と暮らすようになってから、そこのソファで彼の隣に座ったことはない。
彼もまた、私を誘ったこともない。
緊張が走る。
「どうしてですか?」
「話し相手ほしいから」
私と話をすることなんて何かあるんだろうか。
特に楽しい会話を提供できるわけでもなく、一緒にいて楽しい時間を過ごせるとも思えない。
話が弾まないならいても居なくても変わらないし、どちらかといえば気詰まりなんじゃないだろうか。
ぐだぐだと考え、即答できずにいる私に、壱矢が手を差し出して微笑んだ。
「おいで」
その声が、その語気が、その瞳が、優しいくせに強くて。
拒めない引力を放ってくるから、
だから私は────
「はい」
抗えなかった。
半端に開けていたドアを閉め、まるで壱矢に吸い寄せられるようにソファに近づく。
壱矢の前まで来て止まると、彼はただ私を見上げているだけでなにも言葉を発しない。
差し出された手は、私がそれを取らない限り引っ込まない気がして、気付けば広い手のひらに自分の指先を乗せていた。
壱矢の手が跳ねる。

