好きとか愛とか

まだ始まったばかりでそう数はこなしていない体育の授業だが、思い返される安倍さんは与えられた課題に苦戦していた。

 「そうだね」

 「100メートル走だったよね…。記録録るとか進学校特進なんだから必要無くない??」

 「確かにそれは思う」

激しく同意だ。
普通一般の進学校は大体体育に力をいれず、一応やらなきゃいけない程度に組まれているのに、この学校はがっつり指導が入っている。
頭だけでは生き残れない、と理事長が入学式でのたまっていた時は決まり文句だと思っていたが、しっかり本気だったのでものすごく驚いたのを記憶している。

 「壱ちゃん運動はどう??細いのに授業みてたらパワーもあって得意そうだよね」

 「苦手ではない程度」

実際中学の頃はバスケ部に所属し、真面目に取り組んでいた。
今は勉強ばかりしているが、あの頃は勉強より身体を動かす方が多くて体育会系女子だった。
こんなことになっていなければ、別の高校で何かしらの部活に入っていたかもしれない。

 「それってそこそこ出来る人の発言だー。凄いなぁ、文武両道って感じだしおまけに美人だしスタイルいいし…」

飛び出てきたワードに眉が反応する。