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昔々、兄と妹がいればなと夢見た少女がいました。
けれど一番最初に産まれた長女の彼女に兄はもう無理です。
ならば兄を諦めて妹だけでもと小さな頃から願っていたら、なんとその願いを聞き入れてくれた神様が、妹だけではなくお兄ちゃんまで授けてくれたのでした。
少女は念願のお兄ちゃんと妹に囲まれて、末永く幸せに暮らしましたとさ。

なんて、そんなうまい話はない。
あったとしても裏がある。
ただで手に入るもの、美味しい話には必ず裏があるのだ。

私はそれを、一年で思い知らされた。

 「おはよう、壱(いち)。相変わらずはえぇのな」

しんと静まり返った早朝5時過ぎ、食事の最中に後ろから声をかけられた私はビクッとなって声の方を振り返った。

あぁ、
やっぱりか。

 「おはようございます」

振り返った先にいたのは、寝巻き姿の奥津壱矢(おくついちや)。
私の、
私の、義理の兄である。
ぶっきらぼうは自覚の上で、普段と変わらないそっけない言葉で挨拶を返した。
私の返事にっこり笑って袖をまくった壱矢がキッチンへ向かう。
暖かいお茶を淹れた壱矢は冷凍庫から朝食用のパンを取り、レンジに入れて暖め始める。
やがて電子音がし、食べ頃まで暖まった朝食を持って私の前の椅子に座ると、ゆっくりそれに口をつけた。
私が今食べているものと同じ、フレンチトーストだ。

 「んま」

大きめの一口を頬張り、満足げにうんうん頷く。
昨日の夜、皆が寝静まった頃余ったパンで作っておいたフレンチトーストだが、作る度にうまいうまいを連発している。
悪い気はしないが、いい気も特にしない。