「ごめんね、兄《・》の方で」




低い声は鼓膜に甘く響く。美聖の目の前にいるのは、『SH/KI』の黛 周音《あまね》だった。


周音の冗談のようひ柔らかな口調にも、美聖は慌てて首を横に振る。




「お会いできて光栄です。もしかして、木村さんに伝言したのって、」

「うん。そ。おれ。」




周音の爽やかな笑みは、頬に並ぶ涙ぼくろで甘みが増す。



驚く美聖に、周音はコートのポケットから何か取り出すと「はい」と美聖の胸の前にそれを突き出す。


美聖は握られた手の中にある物の検討がつかず、周音の顔を見る。




「急に呼び出しちゃったからさ、お詫び」

「え、いや、」

「いいからいいから」




周音のゆったりとしたペースに呑まれ、彼の手の下に美聖は両の手のひらで受け皿を作る。



……そこに、ふわり、と"それ"が落ちる。