その日は、事務所で写真集の為の打ち合わせだった。
美聖とマネージャーと、写真集を出版する担当と、専属カメラマンとアシスタントが顔合わせと今後のスケジュールについて話し合う。
「いやあーそれにしても本当にかっここいですね、柊さん」
カメラマンが正面に座る美聖を見ながら言う。瞳を輝かせてうずうずしているあたり、お世辞でもないのだろう。
美聖は、白い歯を覗かせて柔らかな微笑を返す。
「ありがとうございます。照れます」
「楽しみっすね」
片平はちらりと隣の美聖を見る。美聖はきちんと仕事をこなしている。何の不備もなく。いつも通りに。
この間、現場で翠に爆弾を落とされたあとも、撮影が始まればすぐに美聖は役にのめり込んだ。
カットがかかっても止まらない涙が、唯一の美聖の本音だったのだろうが。