大晦日だからといって、子供の頃のような胸が踊る思いはない。が、今年だけはかすかに非日常の出来事が起こるのではないかと興奮していた。



昨日、大晦日を前にして柊 美聖のファンとcoc9tailの息吹ファンへ爆弾が投下された。



「あたしあの記事の画像保存した」

「私なんてコンビニ駆け込んでプリントアウトして額縁に飾った」

「それは末期」



美聖と息吹の熱愛スキャンダルが報道され、私は慌てて同志のグループラインに連絡した。向こうも同じだったらしく、トーク画面は絶叫だけが暫く続いた。


社会人になり日々を消耗するだけの中、推しとその推しの良さについて語り合える同志は、時に恋人よりも価値がある。持論だ。



「ビール開けていい?」

「おつまみも買ってきた!」

「紅白始まるまでcoc9tailのライブ観る?」

「安定のね。ペンラ持ってきたもん」