「……はあ……ふー…よし」




息吹は疲労を隠すようにして気合いを入れ直す。


天性の美しさもセンスもある。それでもなお彼女は、誰よりも努力を惜しまない。


ファンの前では常に笑顔で余裕のある息吹の裏側は、傷だらけの少女だ。



木村は居てもたってもいられず、ガラス張りの扉を開ける。集中しきっている息吹は気がつかない。





「息吹、帰るよ。」




木村の声に息吹が振り返る。


鏡を見つめてプロの表情になっていた彼女が、驚いたように木村を見て、そして、花が咲くように笑う。