《──……いい加減、息吹って呼んで欲しいなあ》




いつの日かの息吹の言葉を思い出す。美聖はソファーの横に置いてあったリモコンでテレビを消す。一気に静けさの広がる部屋で、美聖は息吹に言う。




「────息吹。」




息吹が顔を上げる前にもう一度、気持ちを込めて。




「息吹、顔見せて」




弾かれたように顔を上げた息吹に、美聖は目尻を垂らして笑う。そして彼女が再び顔を隠してしまわないように、クッションを奪い取る。