「柊さん台本読みました?」

「うん」

「今回の櫻子役って結局誰なんですかね。本読みの時も不在だったし、あたしシーン少ないですけど、柊さん多いじゃないですか」

「でも監督が乗り気だし、リハで何とかなるよう頑張るよ」

「相変わらず優等生ですね」




翠の言った通り、今回スペシャルドラマのみに出演することになった〈苑田《えんだ》 櫻子《さくらこ》〉という役者が美聖たちの前に現れたことはない。


監督も何を思ってか事前に知らせることはせず、そうこうしているうちに本番を迎えてしまったのだ。


前回もロケ地として使用した学校を借りて撮影となる。学園ものということだけあって、ドラマの中核を担う撮影はほとんど学校が使われている。




「宇田川監督入りまーす」


「お久しぶりです」
「よろしくお願いします」



監督が現場にやってきて、出演者もスタッフも挨拶をする。そして、そのすぐ後に、マネージャーと共に彼女が現れた。