美聖と息吹の生活は、本人たちが思っていたよりも順調そのものだった。というのも、お互い芸能界で俳優としてアイドルとしてトップに君臨しているだけに、家を空けることが多い。


息吹は当初美聖に言っていた通り、全国ツアーもあるのでなおさらだ。


つまり、共に暮らすといっても常に一緒にいるわけではないのだ。



美聖はちらりとキッチンの時計を見て、息吹の部屋へと向かう。


既に息吹用に特注で頼んだベッドは届いており、ふたりが寝室を共にしたのは初日だけだ。



「息吹さん」



息吹の部屋の扉を軽くノックするが応答はない。この日常に自分自身が若干慣れつつあることに美聖は、慣れない。