息吹は「好き」を貰うことが多い。


今まで数え切れないほどの好きを貰ってきた。


全部全部嬉しかった。宝物だ。貰う度、受け取る度、笑顔になった。



それなのに、今、美聖に与えられた「好き」に、息吹は上手く反応できなかった。



笑顔になりたいのに、表情はぎこちなくなる。



「あ、え、とっ」



息吹は、完璧な笑顔で商品になる自分が溢れかえる部屋を抜け出し、驚く美聖に言う。





「さっ、先にお風呂頂いてもいいですか?」

「え?あ、うん、もちろん」

「ありがとう。……ありがと」




振り向いてすらお礼を言えない自分に、今度は息吹が長いため息を吐き出す番だった。