ああ、言いたいことはもっとあるのに。



美聖は息吹の頬を撫でていた指で、そのまま彼女が被る帽子を掴む。


そのまま少しだけツバを持ち上げて、今度は声が響かないように、そっと潜めて。




「息吹さん、俺を頼ってよ。」




息吹の耳元に唇を寄せて、ふたりだけに聞こえるような声で美聖は囁いた。





「俺の家においで」





息吹の耳が赤くなっていたことに、美聖は最後まで気が付かなかった。