片平は、美聖が真剣そのもので口にした言葉が理解出来ず、顔の筋肉があちこち引き攣る。


そんな片平を見て、美聖は真顔のまま改めて告げる。



「俺の顔を、できれば頬あたりを、平手打ちしてくれないだろうか」

「(聞き間違いじゃなかった…)」

「できれば、2、3発景気よく」

「できるわけないでしょう!?美聖さん自分の顔が商品だって自覚してますか!?」



さすがの片平も呆れ返る。美聖が何を言い出すかと思えば、ムーン()プロダクション()の看板商品《国民の王子》に傷をつけろときた。


片平の仕事は美聖を管理し、売り出すことだ。磨きはすれど、傷をつけるなど言語道断。