あっという間に冬が終わり春がやってきたというのに、私の心は温かくなるどころか冷え切っている。
PM11:38
私は真っ暗な部屋の中で布団にくるまりながらスマホの画面をタップする。
【同じクラスになれなくて残念だったなぁ…】
【賢人:そうだな】
【いちかちゃんと同じクラスなんだよね?席は近いの?】
【ごめん、なんか気になっちゃって】
【まだ起きてる?】
【ホント、ごめん。またいちかちゃんの話だして】
いちかちゃんの話はしないって心に決めていたのに、私はまた破ってしまった。
いちかちゃんの話を出せば賢人が嫌がるって分かってるのに聞かずにはいられなくなる。
数時間前に送った賢人へのメッセージは既読にもならず未読のまま放置されている。
日に日に賢人からの連絡は減り、どんどん返事も遅くなっている。
バシャバシャと音を立てて降り出した雨が窓を容赦なく叩く。
まるで私の心の中のような空模様だ。
「もう私達ダメなのかな……」
弱音を漏らすとそれが合図のように目から勢いよく流れ出した涙が頬を濡らす。
画面をタップすると、ふたりが笑顔でピースをしている待ち受けが映し出される。
お揃いにしようねって約束した待ち受けをぼんやり眺める。
賢人のスマホの画面もまだこの待ち受けのままなのかな。それとももう違うものになってる?
そういえばクリスマスに一緒に買った猫のキーホルダーバッグにつけてくれてるのかな。
通学バッグにはつけてなかったし、部活の物を入れるバッグにつけてるの?
確認をすればいいのに、しようとはしなかった。聞けばいいのに、聞かなかった。
聞いてしまえばギリギリ切れずになんとか保てている細い糸がプツリと切れてしまうような気がしたから。
私が悪かったんだと思う。
付き合い始めてから、私は賢人にたくさんのものを求めるようになってしまった。
もっと連絡して欲しい、もっと会いたい、もっと好きって言って欲しい、もっとギュッと抱きしめて欲しい、もっと私のことを考えて欲しい、もっと私を見て欲しい。
もっと、もっと、もっと。まるで病気のように私は賢人にそれを求めた。
そうしないと不安で押しつぶされてしまいそうだったから。
震える指先で写真フォルダを開いて賢人と撮った写真を見返す。
一番最初に撮ったのは修学旅行の時。ぎこちない笑顔の二人に胸が熱くなる。
花火大会で賢人に告白されて目を潤ませている私。
みんなが帰った後に教室で肩を寄せ合って微笑む私達。
部屋の中でふざけすぎてブレブレだけど、なんか消すのは惜しくて撮っておいたやつ。
写真が苦手だって言ってたくせに、『愛依が撮りたいって言うなら頑張る』って一緒に撮ってくれた。
でも、いつからだろう。一緒に写真を撮らなくなったのは。
賢人は無理をして私に合わせてくれていたんだと今さらながら気付く。
付き合う前、あんなにたくさん送ってくれていたメッセージが今は数えられる程度。
電話だってもうしばらくしてない。
こんなにも声が聞きたいと思っているのに電話すらかけられないなんて、私達はこれでも付き合ってると言えるんだろうか。
静かな室内にザァァっという雨音が響く。
「うぅ……うう……っ」
賢人と付き合ってから一度は好きになったけど、やっぱり雨は嫌い。でも、今日はその雨に助けられている。
どんなに大きな声で泣いても、私の泣き声を雨音をかき消してくれる。
目をつぶると、賢人と二人で小さな傘に入ったあの日を思い出す。
例え、夢でもいい。
笑顔が溢れていた眩しいぐらい幸せなあの日に戻りたい――。
PM11:38
私は真っ暗な部屋の中で布団にくるまりながらスマホの画面をタップする。
【同じクラスになれなくて残念だったなぁ…】
【賢人:そうだな】
【いちかちゃんと同じクラスなんだよね?席は近いの?】
【ごめん、なんか気になっちゃって】
【まだ起きてる?】
【ホント、ごめん。またいちかちゃんの話だして】
いちかちゃんの話はしないって心に決めていたのに、私はまた破ってしまった。
いちかちゃんの話を出せば賢人が嫌がるって分かってるのに聞かずにはいられなくなる。
数時間前に送った賢人へのメッセージは既読にもならず未読のまま放置されている。
日に日に賢人からの連絡は減り、どんどん返事も遅くなっている。
バシャバシャと音を立てて降り出した雨が窓を容赦なく叩く。
まるで私の心の中のような空模様だ。
「もう私達ダメなのかな……」
弱音を漏らすとそれが合図のように目から勢いよく流れ出した涙が頬を濡らす。
画面をタップすると、ふたりが笑顔でピースをしている待ち受けが映し出される。
お揃いにしようねって約束した待ち受けをぼんやり眺める。
賢人のスマホの画面もまだこの待ち受けのままなのかな。それとももう違うものになってる?
そういえばクリスマスに一緒に買った猫のキーホルダーバッグにつけてくれてるのかな。
通学バッグにはつけてなかったし、部活の物を入れるバッグにつけてるの?
確認をすればいいのに、しようとはしなかった。聞けばいいのに、聞かなかった。
聞いてしまえばギリギリ切れずになんとか保てている細い糸がプツリと切れてしまうような気がしたから。
私が悪かったんだと思う。
付き合い始めてから、私は賢人にたくさんのものを求めるようになってしまった。
もっと連絡して欲しい、もっと会いたい、もっと好きって言って欲しい、もっとギュッと抱きしめて欲しい、もっと私のことを考えて欲しい、もっと私を見て欲しい。
もっと、もっと、もっと。まるで病気のように私は賢人にそれを求めた。
そうしないと不安で押しつぶされてしまいそうだったから。
震える指先で写真フォルダを開いて賢人と撮った写真を見返す。
一番最初に撮ったのは修学旅行の時。ぎこちない笑顔の二人に胸が熱くなる。
花火大会で賢人に告白されて目を潤ませている私。
みんなが帰った後に教室で肩を寄せ合って微笑む私達。
部屋の中でふざけすぎてブレブレだけど、なんか消すのは惜しくて撮っておいたやつ。
写真が苦手だって言ってたくせに、『愛依が撮りたいって言うなら頑張る』って一緒に撮ってくれた。
でも、いつからだろう。一緒に写真を撮らなくなったのは。
賢人は無理をして私に合わせてくれていたんだと今さらながら気付く。
付き合う前、あんなにたくさん送ってくれていたメッセージが今は数えられる程度。
電話だってもうしばらくしてない。
こんなにも声が聞きたいと思っているのに電話すらかけられないなんて、私達はこれでも付き合ってると言えるんだろうか。
静かな室内にザァァっという雨音が響く。
「うぅ……うう……っ」
賢人と付き合ってから一度は好きになったけど、やっぱり雨は嫌い。でも、今日はその雨に助けられている。
どんなに大きな声で泣いても、私の泣き声を雨音をかき消してくれる。
目をつぶると、賢人と二人で小さな傘に入ったあの日を思い出す。
例え、夢でもいい。
笑顔が溢れていた眩しいぐらい幸せなあの日に戻りたい――。