花火大会の前日は二学期の終業式だった。

三花やクラスの友達と夏休みたくさん遊ぼうという約束を取り付けた。

とはいえ、夏休みも課外授業や特別授業があったり学校に行く機会は意外とある。

九条とは相変わらずの関係が続いている。

思っていた通り部活の練習が忙しくなると九条は昼休みも休み時間もほぼ寝て過ごした。

……それでもよかった。

九条は毎日部活を終えると必ず私に電話をくれた。

大体の時間は決まっていたし、それまでには夕食とお風呂を済ませて自室のベッドの上で今か今かと待ち構える日々。

画面に九条の名前が浮かぶだけで私は笑顔になって電話に出る。

九条が家に着くまでの間、私達は今日学校であったこととか家族のこと友達のこと勉強のこと、とにかく何でも話した。

私のことを全部九条に知ってもらいたいって思ったし、九条のことも全部知りたいって思った。

不思議なことに話は尽きなくて、いくらだってしゃべり続けていられた。

電話を終えると、私はベッドから降りて部屋の中央にあるテーブルの前に座り込みある物を掴み上げてギュッと胸に抱きしめた。

花火大会の日、九条にあげるミサンガがようやく今日完成した。

ミサンガの発祥はポルトガルやブラジルの教会らしい。願いを込めて紐を手首や足首に巻いて自然に切れると願いが叶うといわれている。

編む色によって意味があるということを知り、試合で勝てるように勝利を意味する赤色、オレンジ、青の3色を選んだ。

動画を観ながら九条のことを思って夜な夜な作りあげた。

実は自分用に同じものを作ってある。

「九条……喜んでくれるかな」

想像すると顔がにやけてしまう。

花火大会は明日だ。

18時、駅前のオブジェの前で待ち合わせ。

「あぁ~、ヤバい!楽しみすぎ……!!」

明日が待てないなんてこんなの初めてだった。