色褪せて、着色して。Ⅱ~悪役令嬢、再生物語~

 ジャックさんの言葉に、驚いて「え」と声が漏れてしまった。
「ジャック、おまえ何言ってんだ?」
 太陽様はぽかんとした表情をしている。
 意味がわかっていない様子だ。

 私はごくりと唾を飲み込む。
「ジャック君、イチゴが何歳かわかって言ってるのかな? イチゴはまだ子供であって、子供一人が先生の家に強盗に入るなんて無理だろう?」
 慌てるようにナイト様が言うが、ジャックさんの表情は変わらない。

「12歳の子供だからって何も出来ないと言い切れるのかな?」
 隣で黙って聴いていた緑目の男が言った。
「彼女一人では無理でしょう。だけど、お金を払って人を雇えば出来ることですよ。だって、彼女は領主の妹なんですから。彼女には、彼女を溺愛している領主の兄と国家騎士団という最強の兄がいる。頼まれて、断る領民がいるでしょうかねえ」
 最大級の皮肉を込めて、ジャックさんが言った。
 イチゴは顔面蒼白で、ナイト様も黙り込み、太陽様は相変わらず口をぽかんと開けてしまったままだ。

「そもそもの事の発端は今から2年前。私はこのジャックに相談を受けたことから始まった」
 急に語りだすんだな、緑目の男・・・
 主犯がイチゴというショックから立ち直れないまま話は続く。
「ジャックには妹のように可愛がっている子がいたそうで、その子が自殺したという…なんともショッキングな相談内容だった。元々、孤児院育ちのジャックだから、本当の妹ではないけど幼い頃から一緒に孤児院で育った可愛い妹みたいな存在だったと」
 緑目の男はちらりとこっちを見た…気がした。
 多分、こっちにわかりやすいように説明を含めて語ってくれているのだろう。
「2年前、ジャックの大切な人はイチゴの侍女として働くようになった。あの頃は侍女やお手伝いさんたちと一緒に暮らしていたんだろう?」
 緑目の男がイチゴを見る。
 イチゴは口を閉ざしている。
「ジャックの大切な人は、イチゴに毎日のように嫌がらせを受けて、ついに自ら命を絶った」
 緑目の男の説明に、背筋がぞっとした。

「あの…イチゴが、妹が本当に侍女を追い込んだんですか?」
 口をぽかんと開けていた太陽様が立ち上がった。
「妹はまだ12歳ですよ。今から2年前といえば、まだ10歳です。嫌がらせといっても、子供の可愛いものでしょう」
「黙れ、太陽」

 ジャックさんは座ったまま太陽を睨んだ。
「子供だから…。それだけの理由でジャックの大切な人の死はうやむやに終わってしまった。それから2年経って今度はまた、強盗と侍女誘拐事件が起きた。今回も子供だからっていう理由で終わらせようとするのかな?」
 緑目の男が言うと、ナイト様は姿勢を正した。
「妹がやったという証拠はあるのですか?」