ナイト様は20代前半だそうだけれど、落ち着いていて。
 領主としての貫禄がしっかりとついている。
 鋭い目で睨みつけたかと思えば、
 一枚の紙を目の前に差し出した。
「この怪文書が町中に出回っていることはご存知で?」
 紙には、私が太陽様をたぶらかして誘惑しているという罵詈雑言が記載されている。

「何ですか、これ…」
 震える手で紙を持ち上げる。
「なあ、ここに書かれてあることは事実か?」
「…事実じゃないです。何ですか、このでたらめは」
 声を荒らげると、ナイト様はチッとこっちに聞こえるように舌打ちした。
「あんたが太陽を家に招き入れて家に泊まらせたっていうのを見た人がいるんだ」
「それは、夜中に太陽様が私の家の前で具合悪そうにしていたので、家の侍女が招き入れて介抱したまでです」
 ナイト様はチッとまた舌打ちする。
「恥ずかしくないわけ?」
「え?」
 怒った顔でナイト様はこっちを見る。
「40歳過ぎたオバサンが20歳の男相手に色仕掛けしてさ。気持ち悪いんだよ」
「色仕掛けなんてしていません。もう結構です」
 勢いよく立ち上がる。
「もう、太陽にもイチゴにも関わらないでもらいたい」
「ええ、言われなくてもそういたしますわ」