元カレの溺愛が止まらない




そう思い受け取りを拒んだのだけれど、


お札を持ったまま優絆が固まってしまい、しーんと静まり返ってしまった。



あら? もしかして、墓穴掘ってしまったかしら。





「⋯⋯⋯⋯」


「⋯⋯⋯⋯」



じとーっと見つめられたまま、沈黙が流れる。


⋯なに、この間。





手に持つお札をしばらく見つめた後、


「⋯⋯じゃあいい」


サッと手を引っ込め、クルッと帰ろうとする優絆をあわてて引き留める。




「え、ちょ、もうっ! 分かった、分かったわよ」


「最初から素直に受け取れよ」



ん、ともう一度差し出されたお札を「ありがとう」とためらいがちに受け取った。




「じゃ、明日もメシよろしく」


「ええ、楽しみにしておいて」


「そうする。じゃあな、また明日」


「帰り気をつけてね。また明日」






玄関の戸が閉まる直前、




「久しぶりに誰かとメシ食えたわ。ありがとな」




どこか嬉しそうな声色で、そんな言葉がわたしの耳に届いた。


ご飯くらい、わたしでよければいつでもいっしょするわよ。






わたしは閉まる扉に消える彼の背中に、ふわっと微笑んだ。





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