魚も器用に骨だけ残して、身は綺麗に完食していた。
⋯育ちの良さが目立つわね。
食べ終わった食器をシンクに持っていく彼に「あとで洗うから置いておいて」と言ったのだけれど、聞き入れてくれず洗ってくれた。
そこまで気を遣わなくてもいいのに。
それにしても、さっきの優絆の表情が気になるわ。
あんなに寂しそうな顔をするなんて⋯。
もしかしたら優絆、夜ひとりでご飯を食べるのが寂しいのではないかしら。
もしくは手料理が食べたい、とか⋯?
早くにお母さんを亡くしているから、家庭の味をあまり知らないのも無理ないわ。
洗い物をする彼の背中を見つめながら、いろいろ思考を巡らせる。
でも、どれだけ思考を巡らせたとしても、答えは彼の中にあるから、わたしに分かるはずないわね。
スッキリせずモヤモヤする胸に、思わず「ハァ⋯」とため息をついた。
「洗い物終わった」
「ありがとう。座ってゆっくりしていって」
