「仕方ないじゃない。目の前に綺麗な鎖骨が見えたんだもの」
それに、それを言われたらなにも言えないじゃない。
「スケベ」
「な、優絆にだけは言われたくない単語ね」
「俺のはスケベじゃなくて、健全」
「⋯⋯⋯」
それ、いつだったかも聞いた気がするわ。
ジトーっと睨むけれど、優絆はフッと笑って、わたしの頭にポンと手をおいた。
「⋯なによ」
ムクれるわたしを見て「怒んなよ」とまた笑った。
そして、テーブルに並ぶ料理を見て、瞳をキラキラ輝かせた。
「やっぱ、メシって手作りが一番美味そうだよな」
ポツリ落とされた言葉とともに、寂しそうな儚さを感じさせる微笑みに早変わりした。
その微笑みは、わたしをなんとも言えない気持ちにさせた。
「うふふ、ありがとう。そんなに褒めてもなにも出ないわよ？」
かける言葉が見つからず、普段通り接することしかできない。
もっと気の利いたことが言えたらいいのだけれど。
「おかわりもあるから、たくさん食べてね」
いまの優絆がどれだけ食べるのかわからないから、ご飯を炊きすぎてしまった。
