⋯ダメね、彼には敵わないわ。
ハァと内心ため息をつきうつむくと、優絆の手のカップラーメンが目についた。
「優絆」
「ん?」
気づいたら彼の名を呼び、
「今夜⋯⋯ウチで一緒に食べる?」
突拍子もない、わたしの本音を口にしていた。
「⋯⋯は?」
目を丸くして、時が止まったかのようにわたしを見つめて動かない。
分かってるわ、驚くのも、困惑することも。
だけど、もし、少しでも彼の助けになるのなら───。
「夜メシなに?」
「豚汁と鯵のフライにしようかなって思うけど」
和食の気分だって、ママからメッセージ届いたから。
「うまそうだな。いいの? 邪魔して」
「ええ。ひとりよりみんなで食べた方がご飯は美味しいのよ」
わたしが微笑むと一瞬優絆が目を見開いた。
フッと綺麗な笑みを浮かべると、カップラーメンを棚に戻した。
「ありがとな、秋妃」
優絆の笑顔が見られるのなら、どうってことないわ。
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