「べつに。喋ったことねーから喋ろうと思って」
声のボリュームを元に戻した優絆は、わたしの瞳をじっと見つめた。
「そう」
「気になってたんだよな、俺。宮里のこと」
「え⋯?」
それってどう言う───。
トクン⋯と、優絆の言動ひとつで胸が高鳴るわたしは、よっぽど彼に夢中なのかもしれない。
「いつだったか授業中居眠りして、クラス中の注目浴びてたからどんなアホなのかなって」
な⋯!
悪びれもせず人の赤っ恥を掘り起こすように、ペラペラ喋りはじめた。
そのうえアホ呼ばわりするなんて⋯!
少しでも期待したわたしがバカだったわ!
優絆の隣でひとりむくれていると、
「ごめん秋妃、ちょっと待ってて」
結局教えてあげることにしたようで、岩波くんが座っていた席に夏葉が座った。
