「なんでだよ───ってちょうどいいとこに! 草柳!」
「え゙」
岩波くんが夏葉を呼び止めた。
さ、最悪だわ⋯!
ていうか夏葉、いまどこから声が出たのかしら。
聞いたこともないカエルのような声だったけれど。
ん?
どこかからか視線を感じ、そちらを見ると、
岩波くんの隣でスマホをいじって我関せず状態の優絆の瞳が、バッチリわたしをとらえていた。
キ、キマズイ⋯。
どうしてわたしを見てるのよ?
「䈎元に数学教えてやってくれよ! 俺教え方ヘタクソみたいで、もうお手上げなんだよ」
優絆が引き受けたはずの役割を、岩波くんが果たそうとしていた。
⋯いやなら引き受けなければいいのに。
「なんで私が? いまから秋妃と買い物行こうと思ってたんだけど」
優絆の視線から逃れるように、わたしは二人を見つめた。
