「失礼ね。そんなことないわよ」
せめてもの抵抗で、口を尖らせた。
「ホラ、岩波くんだって秋妃見て顔面崩壊してるじゃん! それほどいまの秋妃恐ろしいよ」
「え」
驚いて集団の中にいる岩波くんに視線を向けると、たしかに狼狽えていた。
けれど、顔面崩壊は言い過ぎよ。
「そんな嫉妬するなら、秋妃も最上くんに数学教えてもらえばいいじゃん!」
我ながらグッドアイディア!と言わんばかりに、瞳を輝かせてわたしを見る夏葉。
そんなこと言われても⋯。
「わたし数学で分からないところないもの⋯」
授業についていけている以上、教えてもらうことができないのよ!
「秋妃はまだまだだな〜! そこはあえて分からないフリしなきゃでしょ!」
「分からないフリ?」
「秋妃があの子みたいに、かわいーくお願いしたら最上くんだって、コロッと堕ちるでしょーに」
頬杖をつきながら、ニシシとイタズラっ子のような笑みを浮かべてくる夏葉は、本当に楽しそう。
