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「ねえね!最上くん! 今日の数学で分からないところがあって⋯⋯放課後教えてくれないかな?」
2限目が終わったばかりの休憩時間。
教室の隅で数人の男子が集まって楽しく談笑している中、ひとりの女の子が近づいていった。
恥ずかしそうに顔を赤らめて、その胸に抱いているのは数学の教科書。
話しかけられた優絆を、まわりの男子たちがからかうなか「やめろ」と優絆の呆れたような声が聞こえた。
「あの子、最近やたら最上くんに話しかけてるよね。 最上くんのこと好きなのかな?」
夏葉はボケーっとしながら頬杖をついて、ひとりの女の子を見ていた。
「⋯⋯さあ、どうなのかしらね」
夏葉に微笑んだ後、わたしの視線は夏葉を辿った。
優絆にかわいらしい声で話しかけてる、同じクラスの䈎元梛央さん。
わたしと違って身長が低く、くりくりした瞳に、内巻きに巻かれた綺麗な黒髪。