「う、うん⋯⋯?」



夏葉の言いたいことは、よく分からないけれど⋯

似合ってるって言ってくれてるのかしら。






そもそもわたしがこのメイクを始めたのだって、
少しでも彼の理想に近づきたいからで⋯。



〝似合ってる〟とか〝綺麗だな〟って思われたい。



こんなこと続けたって意味がないって、頭では痛いほど理解している。






それでも捨て切れない気持ちが原動力となって、わたしを突き動かす。




新しい恋を探して、この想い吹っ切って立ち直らなきゃね。


あ、でも⋯


ふと思い出すのは、いつの日かの保健室での出来事。






時間(とき)が経つのは早いもので、あれから2ヶ月が過ぎた。




あれは、夢⋯だったのかしら。


夢にしては、とてもリアルなような気もするのよね。



意識がハッキリとしていなかったから、どちらとも言えない。





だけど、なにかがそっと唇に触れた感触が、リアルにいまも残ってる。




「夏葉」




考えることに集中しすぎたせいか、無意識に彼女の名前を呼んでいた。