小さな声でつぶやき、手際よく手当てをしてくれた。
表情に影を落とし、心配そうに顔を覗き込まれた。
「いいえ、大丈夫よ。ありがとう」
安心してほしくて、わたしはふわっと彼に微笑んで見せた。
「⋯⋯⋯っ」
彼は目を大きく見開いたあと、顔を逸らした。
その顔は少し、赤くなっているようにも見えた。
───気のせい、よね⋯?
「手当てしてくれてありがとう。もう授業はじまるから戻って⋯?」
時計を見て、あと数分で授業がはじまってしまうことに気がついた。
わたしのせいで遅刻したら申し訳ないわ⋯!
そう言うと彼はきょとんとした表情をして、
「授業なんかサボるけど」
平然と一言、そう言い放った。
